北京2007 BEIJING2007

久しぶりに北京を訪れた。
2008年の北京オリンピックにむけて急速に「きれい」になっていく街の変化に驚いた。
今回は家族旅行とあって、いままでの貧乏旅行では味わったことのない一面にふれた。
(ちなみに前回訪れた03年の写真も別ページにあるのでご覧ください。)


其ノ壱(5月23日星期三)

       北京飯店前の地鉄站(地下鉄の駅)入り口

見てわかるとおり王府井駅の入り口。
東長安街を横断するためにもぐってみたが、朝のせいか物売りなどの姿もなく閑散としていた。
奥に見えるビル郡は東方新天地というショッピングモール
藩家園旧貨市場(本当はハンは草冠なし)

8時にホテルに迎えに来るはずの八達嶺行きのバスが30分遅れでやって来た。母と夫は万里の長城へ向かい、私とジューネイさんは市場へ買い物に行くことにした。
朝9時半、まだ開店準備中。土日は蚤の市も開かれ賑わうという。この日は平日で客もまばら。ゆっくり買い物を楽しめた。
同市場

ここで茶具の飾り棚を買う。100元なら買ってもいいなと思ったら、ずばり100元だという。慌てて値切って、結局82元で手を打つ。ここの市場で扱っているものは骨董や工芸品。アンティークという名のガラクタといった感じだが、本物でなくても安くて面白いものを買いたい私たちには最高の場所だ。気づけば額入りの水彩画、シルク風の巾着袋、和綴じのメモ帳、中華風の便箋、透かし彫りの香木など、冷静に考えれば何に使うのか不明のものまで買い込んでしまっていた。でも連れのジューネイさんを見ると私以上に竜の置物やテーブルランナーなど大物を仕入れていて、こころなしかほっとする。
前海の星巴克(スターバックス)

昔、買ったクレアトラベルに載っていた羊しゃぶしゃぶの店で昼食をとろうと思ってタクシーに乗るも、すでにそこは閉店したという。しかたなく胡同めぐりの出発点に近い前海まできた。その前海公園の入り口にあったスターバックスコーヒー。
ちなみに潰れた幻のお店は地安門の満福楼。
前海のほとりのレストラン

午後一時を回ったせいか、レストランは軒並み開店休業状態。店の前の菜単(メニュー)を見て悩んでいると、ウェイトレスさんが出てきた。何料理の店か訪ねると杭州料理だという。杭州の料理は比較的日本人の口に合うと判断し、ここで食事をすることに。眺めの良い二階に通され、落ち着けた。
杭州料理

青椒牛肉絲、炒青菜(ホウレン草)、川エビの料理
他にヤンジョウチャーハンを頼んだ。残念ながらトンポーロウを注文し損ねた。せっかく杭州料理の店だったのに。

胡同めぐり

事前にインターネットで予約していた旅行代理店の係りの方と什刹海体育運動学校前で待ち合わせ。日本語ガイド付き、2時間半の輪タクツアーで一人180元。北京6回目にして初めての輪タク。風がなんとも気持ちよい。
四合院建築の町並みを横目に進む

立ち止まってじっくり写真におさめたいような門構えの家々の間を軽やかに走る。輪タクの上からシャッターを切るがほとんどピンボケ。意外に速度が速いのだ。
銀錠橋

行きも帰りもここを渡った。地図で見ると前海と后海との間のくびれたところがこの橋。柳が水面に映えて美しい。このあたりは昼は喫茶店夜はバーとなるちょっとおしゃれなお店が多い。ここから徒歩で鼓楼に向かう。
鼓楼

正面に鼓楼が見えてきた。その昔、中国では時を知らせるものとして、鐘と太鼓は一組であったという。鼓楼はその名のとおり太鼓を鳴らす楼閣である。内部には69段のまっすぐな階段があり登ることができる。但し、踊り場のない急な階段のため息が切れることは必然。

鼓楼の上から鐘楼を見る

鼓楼のすぐ北にあるのが鐘楼。よく見るとアーチ型に穿たれた場所の奥に鐘が見える。中国で一番大きな鐘だそうだ。かつては北京で一番高い建物であったとか。高層ビルが林立する現在の北京でも、埋もれずその風格を維持してほしい。
鼓楼の上から南を見る

正面に小高くなっている丘が景山。なんとこの山は人工の山。景山公園の向こうには故宮(紫禁城)が広がり、さらにむこうには天安門広場がある。碁盤の目のようなこの街は東西南北が実にわかりやすい。
鼓楼の上から東を見る

まっすぐにつづく街路樹が青々として美しい。この黄砂の埃から道行く人を守ってくれているようだ。
鼓楼の上から見た四合院建築の家々

四方を守るように造られている四合院は外から中を窺い知ることは難しい。失礼して上から眺めるとうれしくなる。
鼓楼の上から西を見る

元代はここ鼓楼・鐘楼のあたりが街のちょうど中心であったという。それが明のころ街の北壁を南に移したため、現在ではやや中心からずれたように見える。街の西側に裕福な人が住んだため、このあたりには大きなお屋敷が多い。
鼓楼の太鼓ショー

もともと二時間おきに鳴らされていた太鼓だが、現在では観光客のため30分おきに独特なリズムを聞くことができる。楼閣内部には水時計も展示されており、ここが街中に時刻を告げていたことを偲ばせる。
調理器具の商店

鼓楼から下りた通りでしゃぶしゃぶ鍋を発見。これってMUSTAFAさんのページに載っていたお店かな?上段中央がしゃぶしゃぶ鍋、右のぽってりとした土鍋はスープ鍋、左は餃子館で見た水餃子の鍋かな。
銀錠橋胡同

ペンキ塗りたての門扉など観光用に保存していそうな胡同。胡同ツアーの定番ルートらしく、観光客の姿が多かった。かつては通りの幅は狭いところで6歩、広いところで24歩と決まっていたらしい。
門扉の金具

最近取り付けたような新しさのノッカー。この赤い門扉にはやはりこの手の中華的な金具が出来すぎなほど良く似合う。でもこんなのついている家って少ない気がする。
門敦(文官の家)

本当は「敦」には土偏がつき、ガイドさんの発音では「メントゥァル」とアル化していた。門の土台の石のことであるが、その家の主人の職業を表す装飾が彫られている。この門敦の上部には欠けてしまっているが獅子が彫られており、その下は判子の形であり、この家の主は文官であったことをあらわしているという。
四合院の門

先ほどの文官の家の入り口を撮ったものであるが、朱塗りの門扉の上部に二つ丸太のような形のものが突き出ているのがわかるだろうか。これをガイドさんは眉と呼んでいた。ものの本によると「門簪」とある。この装飾と入り口の階段の段数は主人の身分によって決められていたようだ。眉が二つの場合は段は三段、眉が4つの場合は段は五段、皇帝は眉五つ段は九段だったという。
ちなみに眉も段もないのは平民の家だそうだ。
門敦(武官の家)

この門敦は太鼓の形をしており、この家の主は武官であったことをあらわしているという。だいぶおおざっぱに門を塗り替えたらしくせっかくの門敦がペンキまみれ。この辺がとても大陸的だ。
避雷針

どの家も門の屋根にこの角のような突起がついていて以前から何かな〜、と思っていたら、避雷針であったそうな。これは明らかに最近修復した感じ。やはり壊れて欠けやすいと見え、古いものが完全な形で残っているところは少ない。
四合院のお宅訪問

この胡同のあるお宅を見せていただいた。ここのお宅は観光客に公開しているだけあってかなり小奇麗。ここで基本的な造りを教えてもらう。中庭を囲うように4つの棟からなっているが、北側(つまり南向き)の部屋は主人、東が長男、西が次男、南が客人と決まっていたらしい。現在このお宅は8人暮らし。今は東を食堂に、西は夫婦の寝室、南はご主人の切り絵の仕事場となっていた。
門から覗く

先ほど家とは別のお宅だが門が開いているので撮らせていただいた。門を入るとすぐ正面は壁がある。そもそも外からの進入を容易にさせない守りの発想で造られている。入って左に進むと中庭に出る。
外壁

この灰色の壁と赤い門扉が繰り返し現れるのがいかにも胡同でいい。でも本当にここは観光客が多い。個人的にはもっと静かなところをこっそり歩くのが理想。
恭王府の蔵

胡同めぐり最後のスポットは恭王府。王族の邸宅であったここは中国国内の団体客の人気スポットらしい。とにかくすごい混雑。この蔵の窓は色々な形をしているが、どこにどういう宝物をしまったか覚えやすくするための工夫だとか。
西洋門

恭王府の中にある西洋風の門。植物が根づいているのが歴史を感じさせる。をここを抜けると庭園が広がる。でも観光客が多すぎてあまり風情は感じられない。
石のオブジェ

後ろから見ると鯉(魚は豊かさの象徴)、前からみると子供を抱いた母子像に見えるという石。お妾が20人もいたのに跡継ぎが産まれない主人が願掛けでこの石を置いたところ、翌年、見事男子が誕生したといういわくつき。
豪奢な部屋で茶芸

もともとは応接間だったのであろうか。やけに豪華な調度。「お茶は飲みたいですか?」というガイドさんの言葉にうなずくと、ここに通された。どきどきして入ると、どうやら茶芸を見せて、お茶や茶碗を売るスペースになっているようだ。曰く、政府直営だからよい商品しか置いていない云々かんぬん。ちなみに茶葉は鉄観音、ジャスミン、ライチーいずれも50g60元、100g120元。茶碗は景徳鎮の高級品のみ。
清代の調度品

入り口には一人100元以上使ってね、というようなたて看板が。たぶん大勢の人がどやどや入って来ないようにとの脅しだとおもうけど。それもそのはずここにある椅子やテーブルはすべて本物のアンティークだという。ちなみに一歩外にでるとところせましとこの建物を囲むように旅遊団の人々が座って休憩している。外の喧騒がうそのように静か。
恭王府の池

池のなかの左の隅に見える小屋は北京ダックちゃんのお家だそうな。本当に白いアヒルがたくさんいた。今日の夕食は北京ダックにしよう。
一度ホテルに戻り、母が行きたいと言っていた貴賓楼飯店の屋上バーに予約しにいったが、屋上バーは来月からでまだ営業していないとのこと。ガイドブックには5月からオープンとあったのに残念。とりあえず小腹が減ったので東方新天地のスーパーで試食してうまかったパンケーキを買ってホテルでつまんだ。
全聚徳王府井店

有名な北京ダック店、全聚徳に行った。前門店は改装中とのことで近くの王府井店にした。帰りに門前で記念撮影をしようと思ったら、同じことを考えているお客さんでちょっとした人だかりが。
予約せずに7時過ぎに行くと、2階の入り口で店員のお姉さんが受付をしていたので「4人なんだけど」というと「42番でお待ちください」と番号札をくれた。「どれくらいかかりそう?」ときくと「20分ほどです」という。
全聚徳の店内

ロビーで座って待っていると、どんどん番号が呼ばれる。二人連れのお客さんは相席なのか先に呼ばれていた。でもちゃんと番号順でなく呼ぶ場合は理由を言っているのがいい。思ったより早く順番がきた。きれいな店内だ。イスの背もたれに付いているポケットにカバーが入っている。背もたれに脱いだ上着をかけたり、バッグを置いたりすると、ウェイトレスさんがやって来て、カバーをかけてくれる。ダッグの油が飛んで汚れないようにとの配慮だろうか。気が利くなぁ。
北京ダック登場

オーダーを受けてから焼き始めるのか、他の料理を食べながら厨房からワゴンが出てくるたびに何度も行き先を見つめて待っていると、ついに私たちのテーブルの前に一羽の丸焼きダックがワゴンに乗せられてやってきた。マスクと手袋をしたお兄さんが慣れた手つきでもくもくと切り分けてくれる。頭、パリパリの皮のみのところ、皮のついた身と、その部位ごとに取り分けてくれてついにテーブルに運ばれる。
メインディシュが揃ったテーブル

よく、北京ダックは皮を食べる料理と言われるが、ごらんの通り身もかなり付いている。写真には写ってないが皮のみのパリパリした部分ももちろんあった。皮のみだとかなり脂っこい。きゅうりや葱、包む皮などはすべてダックの料金に含まれて一羽198元。ほかにダックの腸の炒め物(きゅうりの左の皿、途中で小さい皿に移してくれたが、もっと大皿だった)、ダックの肝料理(よくガイドブックにあるレタスに載ってくるやつ)、袋茸のスープを頼んだがどれも大変おいしかった。4人で1羽ってけっこう多い。
夜の北京飯店

もう満腹で動けないかも!と思ったが歩いてホテルに向かっているうちに夜市で少しつまむぐらいならいけるな、と感じ、腹ごなしに天安門まで行くことにした。途中、貴賓楼飯店の前あたりで振り返って撮影。ライトアップされて美しい。
夜の天安門

雲南の青年に肖像画が焼かれる事件があったばかりだったからか、最近はいつもそうなのかわからないが警備が厳しい。以前は夜間も天安門をくぐって午門まで行けたのだがロープが張られて入れない。撮影をしていると10時に照明が消えて真っ暗になってしまった。もっと早く来ると入れるのかな。仕方なく2時までやっているという夜市をめざして歩いたが、あちこちの道路を掘り返して水道だかなんだかの工事がはじまり夜市も閉店。残念。

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