-China series - Special Thanks & Links - Luotuo BBS - mail -


突き指の理由


私は幸い大怪我や大病を患ったことがない。
ケガと言ってもせいぜい突き指どまり。
これは喜ぶべきことである。
そんな、数少ないケガの体験の中で、忘れがたい思い出を書こうと思う。

あれは小学5年生だった頃。
班ごとに課せられた宿題をやるため、F君のお宅に行ったときのことである。
当時の学習班は仲がよく、ことあるごとにF君の家に集まり、宿題にかこつけて遊んだものだった。
F君の家はきれいで、子供部屋にはベットがあり、キレイでお菓子作りの上手なお母様がいらっしゃるとなると、それはもう集まるには、もってこいの条件がそろっている。

その日も宿題そっちのけではしゃぎだしてしまった。
これがいけなかった。

テンションが高くなっているところに、F君のオシリが目に入った。
そして今まさにこちらに突き出すような姿勢になった。
もう、こうなったら、子供が考えることは一つ。
カンチョーして、と言わんばかりのポーズに、その衝動を抑えられるほど、私は大人ではなかった。
思わず、人差し指をそろえて勢いよくF君のオシリに突進したその瞬間、F君が振り向いた。
わずかに的を外した私の人差し指はF君のオシリにはじきかえされるハメにあった。

口ではカンチョーと叫びながら指には激痛が走った。
いてぇーっ!と思いながらも、その場で起こった笑いにつられて、言いそびれ、はしゃぎ続けた。

その間も常に指が痛かった。
しかし小学生とはいえ、さすがにカンチョーで突き指という事態が、恥ずかしいと思えるだけの羞恥心は持ち合わせている。
この場で言い出して先に帰るのもやだったし、ウチに帰って事情を話すのもやだった。
ま、そのうち直るだろう。
そう思ってだまっておくことにした。

しかし、次の日になっても痛みが和らぐことはなかった。
どうしよう。
このまま黙っていてよいものだろうか。
でも話せば絶対理由を聞かれる。
低学年の子ならともかく、小学5年にもなってカンチョーで突き指はないだろう。
しかも女の子で、だ。

どうすっかなぁ。
そこへ、私がそんなことで思い悩んでいることなど露知らず、友人が楽しげにやってきた。
「バレーボールやろう!」
その瞬間、ひらめいた。
これだ!
バレーボールで突き指。
なんて自然な理由。
これなら堂々と接骨院にも行ける。

もう一度同じ指を突き指するのは痛かったが、誰はばかることなく治療を受けられた。

その後、中学生になってから、姉とふたりで一言で相手を笑わせる遊びがブームになった。
一通りの笑い話をし、忘れた頃、飲み物を飲んでいる最中に、ボソッとキーワードを言う。
思い出して噴き出したほうが負けである。
今では、このキーワードしか覚えていないのだが「サンダル」「ガードレール」「便所マン」などがあった。
もちろん私の最終兵器は「突き指」であった。
大人になった今でもこの技は飲み会で効いている。



徒然ナル駱駝の表紙へ     次、いってみよう!     駱駝書房TOPへ