徒然ナル駱駝

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小鳥のさえずり


私の家には木が植わっている。
紅葉や椿、ツツジや藤、そして名前も分からない変な植物が、小さな敷地にところ狭しと生えている。
おかげでいろんな虫や鳥、野良猫などがやってくる。

ある日の夜、風呂に入っていると、すぐ近くで
ピーピョロロ
という小鳥のさえずりが聞こえてきた。
あっ、鳥だ!鳥が来ている。
それもかなり近くにいる。

そおーっと窓を開け、外を見た。
暗闇にじぃーっと目を凝らす。
風呂場の窓からもれる明かりが近くの木を仄かに照らしているが、鳥の姿は見えなかった。
気のせいかな。
そう思って窓を閉めた。

すると、それを見透かしたように、また
ピュールルー
と鳴き声がした。

やっぱり、いるんだ。
再び、窓を開け木を見る。
しかし、やはり姿は見えない。
狐につままれた気分だった。

風呂場の横の木は赤い実がなり、曲がった幹に小鳥がとまっているを何度か見たことがあった。
今日もまた来ていると思ったのに。
はぁー。
湯船に浸かってため息をついた。

息を吸って、なんとはなしに鼻から息を出す。
すると鼻から
ピューウー
という音が出た。
あーっ、これだ!
近くに聞こえたはずだよ。
だって自分の鼻がスピスピ音を立てているんだもん。
どうもハナクソが笛のように音を出しているらしい。

分かってみれば、なんのことはない。
一人でなにやってんるんだろ?
ばかばかしさに笑いが込み上げてくる。

そんなことがあって、しばらく後の夜。
風呂から上がり、外の洗濯機に服を入れていると、足元から
ミュウ、ミュウ
という鳴き声が聞こえた。
子猫だ!
野良猫がまた縁の下にでも子猫を産んだにちがいない。

かがんで、姿をさがす。
出ておいで、にゃあ、にゃあ
と声をかける。
でも出てこない。

きっと警戒しているのだろう。
野良猫は用心深い。
きっと触らせてはくれまい。
なかなか、ナウシカのようにはいかないものだ。
仕方がない。
そう思ってあきらめた。

そして、また次の日の晩。

洗濯機の前を歩いていると、また
ミュウ、ミュウ
という声が聞こえてきた。
あっ、今日もいる!
今日こそは見たい。
しゃがんで洗濯機の下を覗く。
いない。
立ち上がり歩き出す。
するとまた、
ミュウミュウ
と鳴く。
ここだ!と思った場所にかがみ込んで、こちらも、にゃあ、にゃあ、と呼んでみる。
鳴き声は聞こえない。
このくり返しだ。
洗濯機から遠ざかると鳴き声は聞こえない。

どうもおかしい。
洗濯機の前でゆっくり一歩足を出し、そおっと体重を出した足に移していく。
するとサンダルの底が、
ミュウウウウッ
と音を立てた。
ガクッ。
まただよぉ!
また一人芝居だった!

洗濯機の周りの床が水で濡れていて、サンダルのゴム底が、体重がかかる度に空気が抜けて音を出していたのだ。

ワシってつくづくバカだなぁ。


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